用途例1 定温輸送

エコジュール トラックと飛行機
エコジュール 宅急便

エコジュールは生活温度領域において任意の温度で蓄熱ができるため、様々な製品の輸送容器内を一定温度範囲に維持するのに適しています。

定温倉庫や冷蔵トラック、冷凍コンテナ等を使用したとしても、積み替え・積み下ろしの際には一時的に温度が大きく上下してしまうリスクがあります。容器内を一定温度に保つエコジュールでの定温輸送は、そのリスクを大きく下げることができます。
運ぶ荷物の例として医薬品、精密機械、生鮮食品、生体材料などがあります。

① 医薬品

医薬品の品質は人命に関わるものであるため高水準の品質管理・保証が必要になりますが、それは製造や販売だけでなく輸送・保管においても同様です。

この流通における品質管理について、日本では(社)日本医薬品卸業連合会が定めたJGSP(Japanese Good Supplying Practice)という、業界団体の自主基準に沿って行われています。
国際的な品質管理基準の流れは、大きくは以下のようになっています。

WHO(世界保健機関)では医薬品流通に関するガイドラインを1999年に作成し、2010年度には医薬品の適正流通基準:GDP(Good Distribution Practices)を定めました。

EUではWHOより先に1992年にGDP指令が発行され、2013年に大幅に改定され、自主基準ではなく法的規制となっています。
このEUのGDP指令を基に、PIC/S(医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム:医薬品分野における国際的に調和されたGMP基準および査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目的とした査察当局間の非公式な協力組織)においてGDPガイドラインが2014年に発効され、実質的に国際基準となりました。

日本も同年PIC/Sに加入しており、これに準拠したGDPガイドラインが2018年に厚労省より出され、2019年にはJGSPもGDP対応版が出ています。
このGDPでは温度管理についても明記されており、例としては第9章輸送には


9.1.1 医薬品を破損、品質劣化及び盗難から保護し、輸送中の温度条件を許容可能な範囲に維持することは卸売販売業者等の責任である。

9.4.3 温度感受性の高い医薬品については、卸売販売業者等及び販売先の間で適切な輸送条件が維持されていることを確保するため、適格性が保証された機器(保温包装、温度制御装置付きの容器、温度制御装置付きの車両等)を使用すること。

9.4.6 断熱ケースに保冷剤を入れて使用する場合、製品が保冷剤に直接触れないようにすること。 断熱ケースの組み立て(季節に応じた形態)及び保冷剤の再使用を担当する職員は手順の教育訓練を受ける必要がある。


といった記述があります。

定温輸送の方法は、いわゆるアクティブ型(電源を利用した冷熱機器による温度管理)とパッシブ型(断熱性の高い容器と蓄熱材・保冷剤を組み合わた温度管理)に分けられます。

アクティブ型は非常に安定した温度管理が可能な一方で、電源が必要であり容器のサイズが限定され重量も重いため、使用できる場面が限られコストも高い。
パッシブ型は管理可能な温度範囲はアクティブ型に比べ広くなるものの、様々なサイズに対応できコストやCO2排出も抑えられます。

5℃以上のパッシブ輸送にはパラフィン系蓄熱材であるエコジュールが最適です。
エコジュールは現在医薬品輸送で使用機会の多い5℃帯(3-8℃管理)と20℃帯(15-25℃管理)をラインナップしております。

② 精密機器

エコジュール 半導体
エコジュール 半導体

医療機器や半導体関連の精密機械などは、高温による不具合や温度変化が引き起こす結露によるショートなどの懸念があります。
半導体等の製造機器は、製品の高精度化に伴い製品以上の精密機械となっており、わずかな温度変化が製品不良や品質低下に繋がります。

精密機器の製造工場や使用する工場では厳密な温度管理がされておりますが、当然輸送時も同レベルの管理が必要になります。
その際、これらの機器は形状・サイズが様々であり、規定のサイズに限定されるアクティブ型輸送には不向きなものもあるため、エコジュールによる定温輸送は有力な選択肢の一つになります。

③ 食品

エコジュール ステーキ(霜降り)
エコジュール 日本酒

一般家庭で冷凍・冷蔵で保管されるように、低温での輸送が必要な食品は多くあります。
医薬品におけるGDPのように、食品に関しても厚生労働省の食品衛生法改正により2022年6月から「HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:ハサップ)」と呼ばれる衛生管理手法に沿った対応が義務化されました。

こちらは流通ではなく全ての食品等事業者(製造に限らず加工、調理、運搬、販売等含む)に対し守るべき衛生管理手法を示したもので、危害要因分析(Hazard Analysis)と重要管理点(Critical Control Point)の2つで成り立っています。

まず危害要因=食中毒を引き起こす細菌等の生物的要因、食品添加物や残留農薬等の化学的要因、異物の混入等の物理的要因に分類し、それぞれについて分析を行うことで管理するポイント・方法を明確にします。 この分析を基に、管理基準や許容限界等=重要管理点を定め、これを継続的に管理することで食品の安全性を確保する、という手法になります。

従来の食品衛生法では主に最終製品の抜取検査による管理が行われており、問題のあったロットに対して調査や回収・廃棄を行うといった対応になっていました。 これだけでは異物混入等の見逃しが起きる可能性があり、原因究明もすべての工程が終わった後なので時間がかかるといった欠点があります。

工程管理はこれまでも各事業者で実施はしていましたが、HACCPによりその手法のレベルを一定以上に保ち、食品の安全性を高いレベルで保つことが期待されています。

定温輸送関連では、HACCPの一般的な衛生管理に関する基準の中で「11.運搬 車両・コンテナ等の清掃・消毒、運搬中の温度・湿度・時間の管理等に関すること」という表記で管理の対象になっています。
食品等事業者が対象であるため、いわゆる物流事業者は制度の対象とはなっていませんが、食品等事業者が工場から各店舗へ運ぶ際などには対象となりますし、食品輸送時の適切な温度管理の必要性は高まっています。

④ 生体材料

エコジュール 顕微鏡
エコジュール 顕微鏡

生物やその細胞等を生きたまま輸送するには、生き続けられる環境を保持しなければなりません。
細胞であればその生物の体温に、水生生物であれば水温に保つことで、生きたまま、健康な状態で運ぶことができます。

これまで冷凍で輸送していたものでも、適切な環境下で生きたまま輸送することで、食品であれば味や栄養が良くなったり、細胞や検体であれば機能や生存数が上昇したりといった可能性があります。

アクティブ型の容器ではコストが合わない、敷居が高いといった場合に、エコジュールを使用した定温輸送がその解決手段になるかもしれません。